「自分なんて、後回しでいい」「みんな頑張ってるのに、自分だけ休むなんてできない」
そんなふうに、無意識のうちに“我慢すること”を選び続けていませんか?
日本には、自己犠牲や忍耐を美徳とする文化が深く根づいています。
ですが、自分の気持ちや疲れを置き去りにしたままでは、心も身体もやがて限界を迎えてしまいます。
この記事では、「自分を大切にするのは甘えではない」というテーマを、心理学や脳科学の視点から丁寧に読み解いていきます。我慢や自己否定を手放し、健やかに生きるための“自己ケア”の本質を、一緒に見つめ直してみませんか。
「自分を後回しにするのが当たり前」になっていませんか?

「大丈夫、自分はまだ頑張れる」「自分よりもっと大変な人がいる」──そうやって、無意識に自分の気持ちや限界を押し込めていませんか?
私たちの多くは、誰かに迷惑をかけないように、人に心配をかけないようにと、自分のことを後回しにすることに慣れてしまっています。仕事や家族、学校や人間関係の中で、「自分よりも他人を優先するのが当たり前」という感覚が、日常のあちこちにしみ込んでいるのです。
ときには、「これくらいでつらいなんて言えない」「こんなことで休んでいいのかな」と、自分の感情や状態にすら疑問を持つこともあるかもしれません。でも、その“がんばり”は本当に必要なものだったでしょうか?
評価される「がんばり」と、見過ごされる「疲れ」
社会の中では、「がんばっている人」はよく目立ちます。成果を出したり、誰かの役に立ったりすることは評価されやすく、そこに“意味”や“価値”があるように感じられるからです。一方で、「疲れていること」「助けを求めること」「自分を労わること」は、なかなか表に出しにくいものです。むしろ、それを口に出すことに“申し訳なさ”や“恥ずかしさ”を感じてしまう人も少なくありません。
しかし、自分の疲れやストレスを無視したまま走り続ければ、心も身体も、いつか必ず限界を迎えます。
“我慢強さ”の裏にある、自分への無関心
「我慢強い人ですね」と言われることは、ある種の褒め言葉です。ですが、それが「自分の気持ちに気づかない」「無理をしても止まれない」状態を意味しているとしたら──その強さは、むしろ危ういものかもしれません。
本当はつらいのに気づけない。本当は助けてほしいのに言い出せない。
それは“強さ”ではなく、“麻痺”かもしれないのです。
私たちは、がんばる前にまず「自分がどう感じているか」に目を向ける必要があります。
それが、「自己ケア」の第一歩でもあります。
自己犠牲や我慢が当たり前になる背景には、日本人特有の価値観も深く関わっています。次のセクションでは、その文化的背景を少し掘り下げてみましょう。
日本人に根強い“自己犠牲=美徳”という価値観

「人に迷惑をかけないように」「自分のことは後回しに」──こうした価値観は、日本の社会や文化の中で長く根づいてきました。単なる個人の性格ではなく、集団の中で円滑に生きるために育まれた“生き方の知恵”でもあります。
しかし、その価値観が強くなりすぎると、自分のニーズや限界を無視し続けることにつながりかねません。
では、なぜ日本では“自己犠牲”がこれほどまでに美徳とされてきたのでしょうか?
「和を乱さない」ことが最優先される社会
日本では昔から、集団の調和を乱さないことが重んじられてきました。戦後の学校教育や企業文化においても、「協調性」「忍耐」「空気を読む力」が高く評価され、反対に「自己主張が強い」「わがまま」とされる行動は抑制される傾向にあります。
この価値観の中では、「自分がどうしたいか」よりも、「周囲にどう見られるか」「皆と同じであるかどうか」が重要視されるのです。
自己犠牲が「いい人」の条件になる
こうした文化のなかで、「自分を犠牲にしても他人のために尽くす人」は“立派な人”と見なされやすくなります。
家族のために働き詰める親、職場で誰よりも遅くまで残業する人──その姿は賞賛され、称えられることすらあります。
一方で、「自分を大切にしたい」「今は休みたい」という気持ちは、まだどこかで“甘え”や“わがまま”と解釈されがちです。
価値観の変化が求められる時代に
もちろん、誰かを思いやる気持ちは大切です。しかし、思いやりとは「自分を犠牲にすること」ではありません。
現代では、多様な生き方や働き方、家族のあり方が認められるようになってきました。にもかかわらず、心の奥に残る“自己犠牲こそ美徳”という思い込みが、今も私たちを縛っていることがあります。
この古い価値観を見直し、自分自身の感情や疲労に目を向けることが、健やかな「自己ケア」の出発点になります。
では、そうした価値観のなかで自分を抑え続けてきた結果、心と身体にはどのような影響が現れるのでしょうか。
次のセクションでは、「燃え尽き症候群」という心理状態を通して、そのリスクを見ていきます。
自分を抑え続けた先に起こる「燃え尽き症候群」

自分のことを後回しにして、周囲の期待や役割を優先し続ける──そのような状態が長く続いたとき、心と身体に現れるのが「燃え尽き症候群(バーンアウト)」です。
これは、単なる疲労ではなく、慢性的なストレスにさらされることで、情緒や意欲、判断力までもが枯渇する心理的状態を指します。
特に真面目で責任感の強い人ほど、バーンアウトに陥りやすい傾向があるといわれています。
「がんばること」が自分をすり減らすとき
燃え尽き症候群は、以下のような段階を経て進行するとされています。
- やりがいを持って頑張りすぎる(理想と期待)
- 疲れを感じても無視する、あるいは、理想や期待に対する現実とのギャップへの絶望
- 感情が乏しくなり、無気力になる
- 自分や周囲に対してネガティブになる(自己否定・無力感)
- 身体にも不調が出る(睡眠障害・胃痛・体重変化など)
この流れを見てもわかるように、「がんばること」自体が悪いわけではありません。
問題は、自分の限界を無視して、立ち止まることができなくなることです。
共感疲労と“いい人”の落とし穴
人の役に立ちたい、誰かを助けたいという気持ちが強い人ほど、「共感疲労(エンパシー・ファティーグ)」に陥りやすいと言われています。
医療や福祉、教育、家庭のケアなど、感情労働が多い場面では特に注意が必要です。
他人に寄り添いすぎるあまり、自分の感情を抑圧してしまう。そして、いつしか「誰のためにがんばっているのか」も見えなくなる──これは、多くの“いい人”が直面する落とし穴です。
自分を無視し続けることの代償
バーンアウトに共通するのは、「自分の声を聞いていなかった」という実感です。
小さな疲れや違和感を無視し続けた結果、突然エネルギーが切れたように何も感じられなくなってしまう。
そのとき、はじめて「自分はこんなに限界だったんだ」と気づく人も少なくありません。
だからこそ、自分を大切にすることは“贅沢”ではなく、“必要な保守点検”なのです。
では、自分を大切にするとは、具体的にどういうことなのでしょうか?
次のセクションでは、「脳と身体のメンテナンス」という視点から、その実践的な意味を見ていきます。
「自分を大切にする」とは脳と身体をメンテナンスすること

「自分を大事にしよう」と聞くと、どこか感情的で抽象的な響きに聞こえるかもしれません。
しかしそれは、決して感覚や気分だけの話ではありません。実は「自分をいたわること」には、脳や神経系の働きを整えるという、れっきとした生理的な意味があるのです。
自己ケアは、メンタルヘルスを守るためだけでなく、私たちの思考力・判断力・人間関係の質にまで関わってきます。
ストレスホルモンと“自分を無視する”状態
人が強いストレスを受けたとき、脳内では「コルチゾール」と呼ばれるストレスホルモンが分泌されます。
適度なストレスは集中力や警戒心を高めますが、長期間にわたって高いコルチゾール状態が続くと、脳の海馬(記憶・感情調整を担う)や前頭前野(判断や意志の司令塔)がダメージを受けることが研究で分かっています。
つまり、「無理をしてがんばり続ける」ことは、脳の働きを徐々に低下させてしまうのです。
セルフコンパッションが脳を落ち着かせる
では、逆に自分にやさしく接することで、脳にはどんな影響があるのでしょうか。
近年注目されているのが、「セルフコンパッション(self-compassion)」という概念です。
これは、「つらいときに自分を批判するのではなく、いたわりや共感の気持ちを向ける態度」を指します。
このセルフコンパッションを高めると、副交感神経が優位になり、心拍数が落ち着き、ストレス反応が軽減されることが実証されています。また、情動調整や共感を担う脳領域(前帯状皮質・島皮質など)も活性化するとされています。
「ちゃんと休む」は、パフォーマンスの基盤になる
疲れを感じたときにしっかり休む。自分の気持ちに「それでいいよ」と言ってあげる。
こうしたシンプルな行動は、自律神経やホルモンバランスを整えると同時に、集中力や創造性を回復させる効果があります。
自己ケアは“なまけ”ではありません。それは、脳と身体を本来の働きに戻すための科学的な戦略なのです。
では、その「自分を大切にする」ことを、私たちはどのように意識していけばいいのでしょうか。
次のセクションでは、「自分は一番身近な他人である」という視点から考えていきます。
「自分は一番身近な他人」だからこそ、大切にする必要がある

私たちは、誰かが疲れていれば「無理しないでね」と声をかけ、失敗した相手には「そんな日もあるよ」と励ますことができます。それなのに、同じ言葉を自分自身にはかけられないという人は、決して少なくありません。
「甘えてはいけない」「もっとできるはず」──そんな内なる声が、いつの間にか自分を追い詰めてしまっているのです。
でも、考えてみてください。あなたが一番多くの時間を共にし、心と身体の変化を間近で感じているのは、ほかでもない“自分自身”なのです。
感情のラベリングが“自分を知る”第一歩
心理学の分野では、「情動ラベリング(Emotional Labeling)」という手法があります。
これは、自分が感じている感情に言葉を与えることで、その感情を整理・調整しやすくする方法です。
たとえば、「なんだかしんどいな」と思ったときに、
- 「私は今、焦りを感じている」
- 「不安があるけど、それをごまかそうとしている」
といったふうに、自分の感情に正確なラベルを貼ることで、脳の扁桃体(不安・恐怖の中心)の過活動が落ち着くことがわかっています。
この小さな作業は、まさに「自分という他人に耳を傾ける」ことそのものです。
内的対話が自己像をつくる
私たちは日々、頭のなかで無数の“自分への語りかけ”をしています。
「まだできていない」「ちゃんとやらなきゃ」といった言葉がクセになっていると、それは知らず知らずのうちに自己否定のフィルターとして働くようになります。
逆に、「今日はここまでやれたね」「これでもう充分だよ」といった内的対話を続けると、自己肯定感や安心感の土台が育まれていきます。
自分をどう扱うかは、人生のあらゆる選択や人間関係に反映される、非常に深い影響力を持つ態度なのです。
“自分にだけ厳しい人”は、要注意
他人には優しくできるのに、自分には極端に厳しい人がいます。
その姿勢は一見「謙虚」や「ストイック」に見えますが、自分を尊重する力が育っていない状態ともいえます。
本当に自分を大切にしている人は、自分を甘やかすことなく、必要なときにきちんと守ることができます。
それは、他人に依存せず、自分との信頼関係を築いている証でもあります。
では、「自分を大切にする」ことは他人を軽んじる行為なのでしょうか?
次のセクションでは、その誤解を解きながら、やさしさの本質について掘り下げていきます。
自分にやさしくすることは、他人を甘やかすこととは違う

「自分を大事にしたい」「もっと休みたい」──そんな言葉を口にしたとき、
「そんなの甘えじゃない?」
「自分ばっかり大事にしてどうするの?」
といった反応が気になることはないでしょうか。
ですが、自分を大切にすることと、他人をないがしろにすることはまったく別の話です。
むしろ、自分にやさしくなれる人こそ、他人にも本当の意味でやさしくなれるということが、心理学的にも明らかになってきています。
セルフコンパッションとは何か?
この分野で近年注目されているのが、先ほども触れた「セルフコンパッション(Self-Compassion)」という考え方です。心理学者クリスティン・ネフ博士の研究によれば、セルフコンパッションとは、
- 自分へのやさしさ(self-kindness)
- 人間共通の苦しみの理解(common humanity)
- 自分の感情へのマインドフルな態度(mindfulness)
の3つから構成されており、これは自己肯定感とは異なるものです。
自己肯定感が「自分は価値のある人間だ」という評価に基づくのに対し、セルフコンパッションは「たとえ失敗していても、価値がなく感じても、自分にやさしくしてよい」と考える態度です。
自分を責めるとパフォーマンスが落ちる
「反省しないと成長しない」「自分に厳しくしなきゃ」と思っている人も多いかもしれません。
しかし、研究によると、自分に厳しい人はモチベーションや達成感がかえって下がる傾向があります。
逆に、セルフコンパッションの高い人は、
- ストレス耐性が高い
- モチベーションを内側から保てる
- 他人に対しても共感的に接しやすい
といった特徴を持ち、長期的に安定した成果を出しやすいとされています。
「自分をいたわる=甘やかす」ではない
自分をいたわることは、単なる“逃げ”や“甘やかし”ではありません。
本当に大切なのは、「今の自分に必要なケアを、必要なタイミングで与える力」です。
それは、子どもを甘やかすのではなく、必要なときに休ませたり励ましたりする、信頼ある大人の態度に近いものです。そしてそれは、自分自身に対しても、十分に持っていい態度なのです。
では、そうした“自分を大事にする”という態度を、私たちはどのように日常生活の中で実践していけばよいのでしょうか?次のセクションでは、具体的な方法とヒントをご紹介します。
“自分を大事にする”って、具体的にどうすればいい?

「自分を大切にするって、つまりどうすればいいの?」
──そう感じる方は少なくありません。
心がけや考え方だけで終わらせず、日常の中で具体的に行動に落とし込むことが、自己ケアを習慣化するための鍵です。
ここでは、今日からでも始められる小さな工夫をご紹介します。
まず「疲れた自分」に気づくこと
自己ケアの第一歩は、「気づくこと」です。
疲れているのに気づかない、我慢しているのに自覚がない──それでは、手を差し伸べることもできません。
一日の終わりに「今日はどんな瞬間に息が詰まった?」「どんなときにホッとした?」と振り返ってみましょう。
自分の感情や身体の状態に意識を向けるだけで、負荷に早く気づけるようになります。
小さな休息を“許可”する
「ちょっと休む」「あたたかい飲み物をゆっくり飲む」「5分間スマホを見ずに目を閉じる」──それだけでも脳と身体には大きな効果があります。
ポイントは、“意図的に休む”ということ。
「何もしない時間」には、脳が情報を整理したり、感情をリセットしたりする働きがあります。
そして何より大切なのは、「これくらいのことで休んでいい」と自分に許可を出すことです。
自分への声かけを変えてみる
無意識のうちに、「もっと頑張らなきゃ」「まだ足りない」と自分を追い立てていませんか?
そのかわりに、他人にかけるような言葉を、自分にもかけてみましょう。
- 「よくやってるよ」
- 「疲れて当然だよ」
- 「できたこと、ちゃんとあるよね」
はじめは照れくさくても、この“内的な声かけ”の質を変えることが、セルフコンパッションを育てる土壌になります。
「ちゃんとできること」より「自分を雑に扱わないこと」
完璧な自己ケアを目指す必要はありません。
大事なのは、“ちゃんとやる”ことではなく、“雑に扱わない”ことです。
忙しい日でも、自分の存在を少しだけでも立ち止まって意識する。
その小さな瞬間の積み重ねが、自分自身への信頼感を育てていきます。
では、こうした日々の自己ケアが積み重なると、私たちの生き方やものの見方はどう変わっていくのでしょうか。
次のセクションでは、「我慢」ではなく「信頼」に根ざした自己との関係性に焦点を当てていきます。
我慢よりも、“自分を信頼する”という在り方へ

ここまで、「自分を大切にする」ことの意味と、その背景にある心理学的・生理的な理由を見てきました。
その本質を一言で言い換えるなら、それは「自分との信頼関係を取り戻すこと」だといえるかもしれません。
我慢や自己否定でしかバランスを取れなかった日々から、自分を理解し、守り、必要なときに立ち止まれる“関係”を築いていく。それは、人生の軸を外側ではなく、内側に置きなおすプロセスです。
自分を信頼できる人は、自分に味方できる人
「こうしておけば安心」「みんながそうしているから大丈夫」──そういった“他人基準の安心”は、環境が変わればすぐに揺らいでしまいます。
一方で、「私はここまでやれば十分だ」「今の私はこう感じている」と言える人は、たとえ周囲の状況が変わっても、自分の声を判断軸にできる力を持っています。
それが“自己信頼”です。
自己信頼は、声を荒げたり、強がったりする必要はありません。ただ静かに、「私は私を見捨てない」と言える確かさです。
習慣としての自己ケアは、自分との約束
自己ケアは、一度だけで完成するものではありません。
疲れたら休む。失敗しても自分を責めすぎない。小さな嬉しさに目を向ける。
そんな行為のひとつひとつが、「私は私を大切にしていい」というメッセージを自分に送り続ける習慣になります。
それは、自分に嘘をつかず、少しずつ信頼を築いていくような日々の積み重ねです。
あなたを一番大切にできるのは、あなただけ
他人がどんなにやさしくしてくれても、自分が自分をないがしろにしているかぎり、そのやさしさは根本の安心にはなりません。だからこそ、自分を大切にすることは、わがままでも、逃げでもなく、生きていくうえでの最小単位の責任とも言えるのです。
他人を大切にしたいなら、まずは自分にやさしく。
何かを与えたいと思うなら、自分の心を満たしてから。
その循環が、人生をより健やかで、輝かしいものにしてくれます。
まとめ──自分を大切にするという行動は、静かな勇気
「自分を大切にするのは甘えではない」
この記事でお伝えしてきたのは、その言葉を感情論ではなく、根拠ある理解として受け取ってほしいという願いでもあります。
日本社会に根づく“自己犠牲=美徳”という価値観の中で、私たちは「がんばりつづけること」や「我慢すること」に慣れすぎてきたかもしれません。
ですが、自分を無視してまで頑張ることは、長期的には心身のエネルギーを枯らし、人との関係さえもすり減らしてしまいます。
自分を大切にするとは──
- 感情や疲れに気づくこと
- 必要なときに休息やいたわりを許可すること
- 自分にやさしい言葉をかけること
- 我慢ではなく、信頼に根ざした自己関係を築くこと
そしてそれは、自分との信頼関係を取り戻すための静かな習慣です。
あなたの声を、あなたが一番に聴いてあげてください。
そしてあなたが、あなた自身をしっかりと褒めてあげてください。
誰かのために尽くす前に、自分が満たされているかを確認してください。
その行動が、人生をより深く、軽やかにしてくれます。







よくある質問
「自分を大切にする」ことと「自己中心的」になることの違いは何ですか?
自己中心的とは、他人の気持ちや状況を考慮せずに、自分の利益ばかりを優先する態度です。
一方で「自分を大切にする」とは、自分の心身の状態や感情を正しく認識し、必要なケアを与えることを意味します。
自分を尊重できる人は、他人も尊重できるようになります。自己中心的とはむしろ対極のあり方です。
忙しくて自己ケアに時間を取れません。どうすればいいですか?
自己ケアは、時間をかけることが目的ではなく「意識を向ける」ことが大切です。
たとえば、コーヒーを飲む5分間を“味わう時間”にする、夜寝る前に「今日はよくがんばった」と自分をねぎらう──そんな小さな行為でも効果があります。
「時間があるときに」ではなく、「今できる小さなこと」に目を向けてみてください。
セルフコンパッションが身につくまでには、どれくらいかかりますか?
セルフコンパッションはスキルですので、習慣的に練習することで育てていくことができます。
毎日数分でも「自分にやさしい言葉をかける」「気持ちを言葉にしてみる」ことを繰り返すだけでも、徐々に自己批判のクセが緩やかになっていきます。
目安としては、数週間〜数ヶ月の継続で変化を実感する方が多いと言われています。
自分を労わることに罪悪感を覚えてしまいます。どう向き合えばいいですか?
罪悪感が湧くのは、「自分が満たされてはいけない」という深い思い込みがあるからです。
まずは、「罪悪感がある=悪いことをしているわけではない」と知ることから始めましょう。
そして、自分へのやさしさを「贅沢ではなく、必要な土台」と捉え直していくことで、少しずつその罪悪感もやわらいでいきます。
他人に頼らずに自分を支えることはできますか?
もちろん可能です。むしろ、自分で自分をケアできる力(自己調整力・自己信頼)を持つことは、長期的な安定につながります。
ただし「一人で何でもやるべき」という孤独とは違います。
他人に頼ることも“自分を守る手段”の一つだと認めたうえで、必要に応じて人に頼れる柔軟さと、自分を支える基盤を併せ持つことが理想です。