社会人になってから後悔した。簿記を学んでわかった、知識の有無で見える世界が違うこと

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「簿記って、経理の人が使うものでしょう?」
そう思っていた時期が、私にもありました。

医薬品と化粧品の工場で約10年ほど、様々な業務を通して数字に関わっていたにもかかわらず、まったく気付くことができませんでした⋯。

簿記の守備範囲の広さに。

簿記を学んだのは、社会人になってずいぶん経ってからのことです。
学んで最初に感じたのは、「もっと早く知りたかった」という後悔でした。
たかだか簿記3級。巷では「あまり意味がない」などと蔑まれているようにも見受けられます。ですが、侮ることなかれ。たかが3級と言われども、されど3級。見える景色は大きく変わります。

仕事に活かしたい方にも、投資を始めたい方にも、あるいは経済ニュースをもう少し理解したい方にも──簿記の恩恵は、思っているより広い場所に届きます。
この記事では私の実感をもとに、簿記3級のメリットを記載していきます。ぜひ、ご参考いただければと思います。

目次

毎日触れていたのに、名前を知らなかった


工場で購買やら棚卸しやらコストの試算やら、お金にまつわる仕事をしていたとき、私はその数字が会社の財務構造のどこに位置するのかを、まったく知りませんでした。そもそも、業務の本質が見えておらず、シンプルに「コスト削減」と言った言葉でしか解釈していなかったのです。

簿記を学んでからわかったことがあります。
たとえば、仕入れ先への支払いは「買掛金」として負債に計上されること。棚卸しで数えていた原材料は「棚卸資産」として貸借対照表に現れること。製品を作るためにかかったコストは「製造原価」として管理されること。
毎日関わっていた業務が、財務という大きな地図のどこかに必ず位置していたのだと、学んではじめて気づきました。

知らなくても仕事はできていました。でも、知っていたら見えていたものが、たくさんあったと思います。
これはどんな職種であっても同じことが言えます。

見積もりを作る、改善提案をする、部署の予算を管理する──どんな仕事にも、お金の動きが必ず存在します。そのお金の動きを「記録し、構造として読み解く言語」が簿記です。

『もっと早くから知っておきたかった。』

常々そう思っています。

経済ニュースが、別の言語から母国語に変わる


「営業利益が前年比で増加」「有利子負債を圧縮」「キャッシュフローが改善」

経済ニュースを聞いたり読んだりしているとき、「内容が全く理解できない⋯」という感覚を持ったことはないでしょうか。それどころか、自分には関係ないと無意識に判断して、耳にすら入ってきていないパターンも私にはありました。単語は日本語なのに、どこか別の言語のように感じる、あの距離感。

簿記3級を学んだら、その距離は間違いなく縮まりました。
損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)の構造を知ることで、ニュースの中で使われている言葉が「記号」から「意味のある言葉」に変わったのです。

たとえば「営業利益」と「経常利益」と「純利益」は、同じ「利益」という言葉がついていても、それぞれ意味が異なります。営業利益は本業でどれだけ稼いだか。経常利益はそこに財務活動の損益を加えたもの。純利益は税金などを引いた最終的な手残りです。この3つの数字の関係を知っているだけで、ニュースの読み方がまるで変わります。

理解できるから面白い、面白いからもっと知りたくなる。そういう好循環が生まれたように感じます。

決算書が「読めない書類」ではなくなる


株式投資をしている方、あるいはこれから始めようとしている方に、特に伝えたいことがここにあります。

企業の決算書は、財務三表と呼ばれる3つの書類で構成されています。損益計算書(P/L)・貸借対照表(B/S)・キャッシュフロー計算書(C/F)です。簿記を学ぶ前は、これらを前にしても数字の羅列にしか見えませんでした。

簿記を学ぶと、それぞれの書類が「何を見るためのものか」がわかります。損益計算書は会社が一定期間にどれだけ儲けたかを示し、貸借対照表はある時点での会社の財産と負債の全体像を示す。キャッシュフロー計算書は、利益が出ていてもお金が実際に手元に残っているかどうかを示します。

この3つを合わせて読むことで、会社が儲かっているのかどうか、借金の規模はどのくらいか、利益がきちんとキャッシュ(現金)として残っているかどうかを、自分の目で確認できるようになります。

簿記3級の知識でも十分な手がかりにはなりますが、2級まで進むと解像度がさらに上がります。連結財務諸表の仕組みや、固定資産の扱い方など、規模の大きな企業の決算を読む上で必要な知識が加わるからです。

現在2級を勉強している中でも、経済ニュースの読み方が3級取得時からさらに変わってきていることを実感しています。

3級と2級で、見える景色はこう変わる


簿記3級の範囲は、おおむね小規模な商業の取引が中心です。売った、買った、払った、受け取った。その記録の仕方と、損益計算書・貸借対照表の基本的な構造を学びます。「簿記3級くらいじゃ意味がない」という意見も見かけますが、それは全くもって違いました。土台がなければ、その上には何も積み上がりません。

2級になると、商業簿記に加えて工業簿記という領域が加わります。製品を作るためのコストをどう計算し、どう記録するか。製造業の原価管理の仕組みです。工場で働いていた頃に肌感覚として持っていたものが、ここで初めて体系的な言葉を持ちはじめました。あの頃の自分に教えてあげたかったなとつくづく思います。

どちらから始めるにせよ、3級が入口であることは変わりません。そしてその入口をくぐった瞬間から、景色は少しずつ変わっていきます。

数字そのものへの苦手意識が、いつの間にか消える

かつての私は、消費税の計算や割引率の計算が苦手でした。「%」が出てくるだけで苦手意識が先に立ち、すぐに電卓に頼っていました。それどころか、電卓を使っても計算できていませんでした。

——つまり、計算の原理など、まるでわかっていなかったというわけです。

簿記を学ぶ中では、利息の計算や原価率の計算など、避けては通れない「割合の計算」に繰り返し触れます。繰り返し、というのがここでは重要で、意味のある文脈の中で何度も触れることで、数字がただの記号ではなく「何かを表しているもの」として認識されるようになっていく感覚がありました。

気が付けばスーパーで値引きシールを見たとき、◯%と書かれていても電卓なしである程度の値引き額を頭の中で導き出せるようになっていました。特別な計算能力が身についたわけではありません。ただ、数字を『意味のあるもの』として受け取れるようになった。その変化が、日常のあちこちで顔を出すようになりました。

それどころか、今や『貸借一致の原則』という帳簿の借方と貸方の数字が一致するというパズルのような仕組みに感動さえ覚えています。

ただし、一つ正直に書いておきます。
数字への苦手意識はなくなっても、活字への苦手意識はなくなりません。
簿記の問題文は思いのほか長く、読解力という数字とはまったく別のスキルが問われます。「計算が得意だから簿記も得意」とはならない、というのも実感しています。

まとめ|簿記は「世界の読み方」を手に入れる入口


簿記3級を学んだだけで、この世界は想像以上に『経済』で成り立っているのだということに気付けました。よくよく考えてみれば至極当然だとは思うのですが、それでも簿記を学ぶ前の私は、「科学」とか「工学」とかいわゆる理科系と言われる物事が根底にあると思っていたのです。

たとえば、新薬の開発は科学の産物に見えますが、何を研究するかは治験コストや薬価設定、保険適用の経済的判断が決めています。どんなに優れた化合物でも、採算が取れなければ製品にはなりません。
環境問題も同じでしょうか。気候変動は科学の問題に見えますが、カーボンクレジットや排出権取引という経済の仕組みで動いています。技術があっても、経済的なインセンティブがなければ普及はしません。
医療もそうですね。診療報酬制度という経済の設計が、医師が何を優先するか、病院が何を揃えるかを決めています。

全ての基礎的な立ち位置に必ず『経済』すなわち、『経済的視点』があるわけです。その上に初めて、「科学的視点」や「工学的視点」が乗ってくることで、この世界は成り立っていました。『経済的視点』がなければ、この世界は発展しなかったと言っても過言ではありません。
それがわかっただけでも世の中の情報への解像度が格段に上がったように感じています。

簿記3級は、資格というより「世界の読み方」を手に入れる入口なのかもしれません。
その入口は、思っているよりずっと近くにありました。

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