図書館は私たちにとって大切な情報収集や読書の場所ですが、その運営を支える司書の役割は多岐にわたります。この記事では、司書の仕事内容や資格取得方法、そして仕事のやりがいや大変なところなど、司書について詳しく解説していきます。司書を目指す方や、図書館の役割を知りたい方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
司書の仕事内容とは?
司書は図書館の中核を成す専門職であり、その仕事内容は多岐にわたります。主に情報や資料の整理、利用者への支援を行い、図書館の利用者が快適に情報を取得できるようサポートしています。以下に、司書の主な業務内容を詳細に見ていきましょう。
利用者へのサポート
司書の最も基本的な役割は、図書館を訪れる利用者へのサポートです。具体的には以下の業務が含まれます。
- 貸出と返却の管理:利用者が本を借りる際の手続きや返却の際に、円滑なサービスを提供し、返却された資料の整理も行います。
- 情報提供と検索支援:利用者が必要とする資料や情報に関する質問に答え、適切な資料をサポートします。
蔵書の管理
司書は図書館の蔵書管理にも重要な担い手です。この業務には以下の要素が含まれます。
- 新刊書の選定:地元のコミュニティに合わせた新しい書籍や資料を選び、地域のニーズに合った蔵書を整えていきます。
- 分類および目録作成:新たに入荷した書籍を適切に分類し、目録を作成することで、利用者が自由に探しやすい環境を提供します。
イベントや活動の企画
地域とのつながりを深めるために、図書館では様々なイベントが開催され、司書がその計画と実施を主導します。
- 読み聞かせや講座の開催:子どもたちや大人が参加できるようなイベントを企画し、実施することで図書館の利用促進を図ります。
- 特集展示の企画:特定のテーマに基づいた書籍を集めた展示を行い、新たな資料に興味を持ってもらう機会を創出します。
館内環境の整備
図書館内の環境を整理する業務も重要です。
- 蔵書の状態確認:定期的に全蔵書の状態を確認し、傷んだり紛失した本について迅速に対応します。
- 書架の整理整頓:返却された書籍を正しい場所に戻し、他の本と混乱が生じないように整理します。
このように、司書の仕事は多方面にわたり、利用者が快適に情報を利用できるような基盤を築くことが求められています。
司書の主な業務
司書の職務は多岐にわたり、図書館内で利用者のさまざまなニーズに応えるために多くの業務を行います。ここでは特に重要な6つの業務を詳しく考察します。
カウンター業務
カウンター業務は司書が直接利用者と接触する場であり、本の貸し出しや返却、新規登録、予約受付、さらに情報提供サービス(レファレンスサービス)などが含まれます。司書は利用者のニーズを的確に理解し、迅速かつ正確に対応することが求められます。レファレンスサービスでは、各種の質問に応じるために豊富な知識が必要となります。
書籍の配架と書架の整理
書籍の配架は、返却された本を所定の位置に戻す作業で、書架の整理は書棚の本が正確に並んでいるかを確認する業務です。この作業では「日本十進分類法(NDC)」に関する専門知識が不可欠であり、正確な知識とスキルが求められます。
蔵書点検
蔵書点検の業務は、図書館のすべての書籍が正しく分類され、その登録内容が実物と一致しているかを確認するプロセスです。この業務は体力を要するため、通常、複数の職員で協力して取り組むことが一般的です。この時に書籍の修繕や書棚の整理、また館内の清掃も行われます。
選書の活動
図書館に新しく導入する書籍を選定する「選書」も重要な業務のひとつです。利用者の興味を引く多種多様な書籍を、限られた予算の中で選ぶ必要があります。特に、幅広い年齢層に響く書籍や、社会的に注目されている話題の本を考慮することが重視されます。
利用者向けのイベント企画・運営
利用者に文化的な体験を提供するために、さまざまなイベントの企画や運営も司書に求められる重要な役割です。例として、子ども向けの読み聞かせイベントや大人向けの専門セミナーなど、参加しやすい形式でのイベントの提供が必要です。
館内の維持管理
利用者が快適に過ごせる図書館を維持するために、館内の管理や清掃も大切な業務です。特に小規模な図書館では、司書自身が清掃業務を担当することも多く、清潔で心地よい環境をキープすることが特に重要です。
これら一つ一つの業務は、司書が図書館の機能を支えるための基盤となっており、互いに密接に関連し合っています。
司書になるための資格取得方法
司書として働くためには、国家資格である「司書資格」を取得することが求められます。この資格を得るためには、主に以下の3つの方法があります。
大学や短大での学位取得
最初の方法は、大学または短大で所定の科目を履修して卒業することです。これらの教育機関では、司書に求められる知識やスキルを学ぶことができ、卒業時に得られる学位が司書資格取得の基礎となります。具体的には、図書館学や情報学などの関連分野に焦点を当てたカリキュラムが用意されています。
司書講習の修了
次に、大学、短大、高等専門学校を卒業した後に「司書講習」を修了する方法があります。この講習は、専門的な知識を更に深めることができる場であり、実践的なスキルや業務内容についても学ぶことができます。この講習を修了することで、司書資格を取得するための条件を満たすことになります。
司書補からのステップアップ
最後の方法は、司書補として3年以上勤務し、その後「司書講習」を修了することです。このルートでは、実際の図書館業務を通じて現場経験を積むことができます。また、図書館の運営やサービスに関する理解が深まるため、実践的なスキルを身につけた上で司書としての資格を得ることができます。
ちなみに、司書補の資格は高校を卒業し、司書補講習を修了することで取得できます。
資格取得後のステップ
これらのいずれかの方法で資格を取得後、希望する図書館の採用試験を受けることになります。公立図書館の場合は、地方自治体の採用試験に合格する必要がありますが、私立や専門図書館など別の道を選ぶ場合も、それぞれ異なる採用試験があります。このプロセスを経て、晴れて司書としての道を歩むことができるのです。
司書の仕事のやりがい
図書館司書の仕事には、感動や達成感をもたらす多くの要素が含まれています。利用者との触れ合いや専門知識を活かすことで、毎日の業務から充足感を感じることができるのです。以下に、司書としての職務を通じて体験できるやりがいについて詳しく見ていきましょう。
利用者の反応と感謝の気持ち
司書の重要な役割のひとつは、利用者が求める情報や書籍を見つける手助けをすることです。図書館に訪れる方が必要な情報を円滑に得られるよう支援することは、大きなやりがいを感じる瞬間です。たとえば、難しい情報を探している利用者に対して適切な本を紹介したり、特定の質問に丁寧に応じたりすることで、「助かりました」といった感謝の言葉をいただくことがあります。このようなフィードバックが、仕事へのモチベーションを高めてくれます。
常に学び続ける環境
図書館司書は、新しい情報や知識に接する機会が豊富です。日々、多岐にわたる資料やリソースにアクセスできるため、自らの興味を広げたり、新しいテーマを学んだりすることができます。これは自己成長につながり、視野を広げるチャンスでもあります。司書として、常に学び続ける姿勢が求められます。
専門的なスキルの向上
図書館司書の業務は多岐にわたります。資料の選定、レファレンスサービス、イベントの企画など、様々な業務を行う中で、専門知識や技術を磨くことができます。さらに、マーケティングやコミュニケーションのスキルも向上するため、キャリアにとって大きなメリットとなるでしょう。このような経験を通じて、司書としての専門性が高まります。
子どもの成長をサポートする喜び
特に学校図書館で働く司書は、子どもたちの成長を促す大切な役割を果たします。入学から卒業まで、図書館を通じて子どもたちの学びや興味を支えることには、大きな意味があります。「図書館が好きだった」と言われると、自分の努力が実を結んだと実感でき、非常に励みになります。
読書の楽しさを広げる充実感
本が持つ魅力を多くの人に伝えることも、司書としての醍醐味の一つです。自身の好きな本や感動した作品を利用者に推薦し、「紹介してくれてありがとう」と感謝される瞬間は、言葉にできないほどの喜びを感じます。本を通して人々の知識が豊かになったり、新しい発見があったりする手助けをできることは、やりがいに満ちた仕事です。
このように、図書館司書としての職務には多くのやりがいがあります。それぞれの業務を通じて、利用者に貢献し自らも成長を実感することができる、魅力ある職場環境が整っています。
司書の仕事の大変なところ
図書館司書の職業は魅力が多いものの、同時に厳しい面も存在します。ここでは、特に司書が直面する厳しい業務や状況について詳しく探っていきます。
利用者とのコミュニケーションの難しさ
図書館司書の業務の中でも、利用者とのやり取りは重要な役割を果たします。しかし、様々なリクエストや不満に対応しなければならないため、時に困難な状況に直面します。具体的には次のような場面があります。
- 騒音やルールの無視への対処:大声で話す利用者や、長時間席を占有する人に対して、静かにしてもらうように促す必要があります。この際は、冷静さと柔軟なコミュニケーションが要求されます。
- クレーム処理:希望の本が貸出中だったり、サービスに対する不満を持つ利用者に対して、その気持ちを理解しつつ適切な解決策を示すことが求められます。
蔵書の管理に関する手間
図書館には多くの書籍があり、その管理は非常に時間と労力がかかる作業です。具体的には以下の業務が挙げられます。
- 蔵書の確認と修理:破損した本の修理や、行方不明な本を探す作業は地道で手間がかかります。
- 返却遅延の連絡:期限を過ぎた本について利用者に連絡を取る必要があり、その際には良好な関係を保つための配慮が必要です。
体力的な負担
図書館司書の仕事は単なるデスクワークだけではなく、体力が必要とされる業務も多々あります。
- 書架の整理作業:高い書棚から本を取り出したり、重い本を運ぶことは体に負担をかけることがあります。
- 立ち仕事が多い:特に混雑時には常に動き回ることが求められ、その結果として体力が消耗することもしばしばです。
絶え間ない学びの必要性
司書として成長を続けるためには、常に新しい知識やスキルを習得する必要があります。デジタル化が進行する現代では、情報資源の効果的な管理や多様な利用者ニーズに応えるための学びが欠かせません。そのため、定期的な研修や自主学習が必要であり、これがストレスの要因となることもあります。
以上のように、図書館司書の仕事は非常にやりがいがある一方で、多くの挑戦を伴う職業です。仕事の多様性や変化に対応するための柔軟なスキルが求められています。
まとめ
図書館司書は、多様な業務を通して利用者の知的欲求に応え、地域の文化的発展に寄与する重要な役割を担っています。一方で、利用者対応や蔵書管理、体力的な負担など、数多くの課題にも取り組まなければなりません。しかしこうした困難を乗り越えることで、司書としての専門性を高め、書籍の魅力を広く伝えていくことができるのです。この仕事には大きなやりがいと充実感があり、図書館の発展と利用者の学びを支える、意義深い職業だといえるでしょう。
また、図書館司書にならずとも司書資格を取得する過程で学ぶスキルは、情報検索や情報処理などの情報リテラシーに関するスキルが多く身に付くため、様々な仕事で重宝します。副業にだって役立ちますよ!
よくある質問
司書の主な業務内容は何ですか?
司書の仕事は多岐にわたり、主に利用者へのサポート、蔵書の管理、イベントや活動の企画、館内環境の整備などを行います。利用者への情報提供やレファレンスサービス、新刊書の選定、書籍の分類と目録作成、読み聞かせイベントの開催、書架の整理整頓など、図書館の運営に深くかかわっています。
司書になるにはどのような資格が必要ですか?
司書の資格を取得するには、大学や短大で関連分野を学んで卒業する、司書講習を修了する、または司書補として3年以上勤務した後に講習を受けるという3つの方法があります。これらの方法で国家資格である「司書資格」を取得することが司書になるための条件となっています。
司書の仕事にはどのようなやりがいがありますか?
司書の仕事には多くのやりがいが存在します。利用者からの感謝の言葉を受けることで充実感を感じられたり、常に新しい知識を学べる環境にあるため自己成長できます。また、専門知識を活かしてサービスを提供したり、子どもの成長を支援するなど、社会に貢献できる仕事でもあります。本の魅力を広く伝えられることも、大きな喜びとなっています。
司書の仕事にはどのような大変さがありますか?
一方で、司書の仕事には厳しい面もあります。利用者とのコミュニケーションに難しさがあったり、蔵書の管理には膨大な労力がかかります。また、書架の整理作業などの体力的な負担も大きく、絶え間ない学習の必要性からストレスを感じることもあります。利用者のニーズに柔軟に対応しつつ、自らのスキルアップにも努める必要があるため、多くの挑戦を伴う職業といえます。